【国賠法1条】裁判官の裁判と違法性(最判昭57.3.12)
「裁判で不当な判決を受けた!裁判官のミスだ!国に賠償させろ!」という主張は、果たして通るのでしょうか?
結論として、**「通常の不法行為よりも、はるかに厳しい条件」**を満たさない限り、国賠法上の違法とは認められません。
1. 事件の概要(事案)
ある民事裁判において、裁判官が下した判決の内容(事実認定や法律判断)に誤りがあるとして、敗訴した側が「裁判官の過失によって損害を受けた」と主張し、国に対して国家賠償を求めた事件です。
「裁判の結論が間違っていた=公務員のミス=違法」というシンプルな論理が通用するかが争点となりました。
2. 判決の要旨(結論)
最高裁は、**「裁判官がした判決は、原則として国家賠償法上の違法とはならない」**と判断しました。
判断のポイント:裁判官の独立と上訴制度
裁判所は、裁判が違法になるための「極めて高いハードル」を以下のように示しました。
- 上訴による是正が原則: 裁判に不服がある場合は、控訴や上告という手続き(上訴制度)によって正されるべきであり、国家賠償を求めるのは筋違いである。
- 違法となる例外的なケース: 裁判官が、**「その付与された権限の趣旨に明らかに背いて、違法または不当な目的を持って裁判をしたなど、裁判官がその職務の趣旨に照らして著しく不合理な行動をとった」**という特別な事情がある場合に限られる。
- 結論: 単に裁判官の事実誤認や法律解釈の誤りがあるというだけでは、国家賠償法上の違法にはならない。
3. 試験対策!ここが狙われる
試験では、国会議員の判例(最判平9.9.9)とセットで出題されることが多いです。
| 項目 | 裁判官の裁判(本判例) | 一般の公務員の行為 |
| 違法性の判断 | **「著しく不合理な行動」や「不当な目的」が必要。 | 通常の注意義務違反(過失)があれば足りる。 |
| 是正方法 | 原則として上訴**(控訴など)で行う。 | 行政不服審査や国家賠償。 |
| 結論のパターン | 判決にミスがあっても、即・違法にはならない。 | ミスがあれば違法になりやすい。 |
ポイント:
「判決の内容が上級審(上の裁判所)で取り消されたからといって、その判決を下した裁判官の行為が直ちに国賠法上違法になるわけではない」というフレーズは頻出の**○(マル)**選択肢です。
4. 関連判例・知識とのリンク
- 国会議員の質疑(最判平9.9.9)→ 「明白な逸脱・濫用」が必要とする点で、裁判官の判例と双璧をなす「ハードル高い系」判例。
- 検察官の公訴提起(最判平2.7.20)→ 裁判官と同様、検察官が起訴した後に無罪になっても、直ちに違法とはならないという類似の判断基準。
まとめ
裁判官の判例のポイントは、**「裁判のやり直しは裁判(上訴)でやれ。国賠法で解決しようとするな」**というメッセージです。
「裁判官・国会議員 = 故意や不当な目的など、よっぽどのことがないとセーフ」と覚えておきましょう。

