【国賠法1条】警察官の捜査活動と「公権力の行使」(最判昭54.7.10)

行政書士試験の学習において、国賠法1条の「公権力の行使」という言葉の定義は非常に重要です。

この判例は、警察官が行う「捜査」という事実行為が、国賠法1条にいう「公権力の行使」にあたるかどうかを判示しました。


1. 事件の概要(事案)

警察官が交通犯罪の捜査の一環として、事故車両を移動させたり、現場の確認を行ったりしていました。その過程(あるいは関連する行為)において、警察官の過失により第三者に損害を与えてしまったという事件です。

「犯人を逮捕する」といった強力な権力行使そのものではなく、その準備段階や調査段階の活動も、国賠法の対象になるのかが争点となりました。


2. 判決の要旨(結論)

最高裁は、**「警察官による交通犯罪の捜査は、国家賠償法1条1項にいう『公権力の行使』にあたる」**と判断しました。

判断のポイント:非権力的な事実行為も含む

  1. 公権力の行使の広義解釈: 判例は、国賠法1条の「公権力の行使」について、国民に対して直接義務を課すような行為(権力作用)に限定していません。
  2. 事実行為の包含: 「公権力の行使」には、権力的なものだけでなく、行政庁が行う非権力的な「事実行為」であっても、それが公の目的で行われるものであれば広く含まれると解釈しています。
  3. 捜査の性質: 交通犯罪の捜査は、公共の安寧と秩序を維持するための公的な活動です。したがって、その過程でのミスは国賠法1条によって解決されるべきだ、とされました。

3. 試験対策!ここが狙われる

試験問題では、「公権力の行使」から除外されるものを知っているかどうかが問われます。

国賠法1条の対象になるもの(公権力の行使)対象にならないもの(私経済作用)
警察官の捜査・パトカーの追跡役所で使用する備品の購入
公立学校の教育活動公用車のガソリン代の支払い
建築確認・税務署の更正決定公営住宅の入居者との賃貸借契約

ポイント: > 「捜査」は一見すると「ただ調べているだけ(事実行為)」に見えますが、**「私経済活動(普通の買い物など)ではない公的な仕事」**なので、1条の「公権力の行使」に分類されます。


4. 関連判例・知識とのリンク

  • 教育活動(最判昭62.2.6)→ 本判例と同じく、「教育」という非権力的な活動も公権力の行使とした判例。
  • パトカーによる追跡(最判昭61.2.27)→ 捜査に関連するパトカーの走行が「違法」となる基準を示した判例。
  • [代位責任の原則]→ 1条の「公権力の行使」にあたる場合、被害者は**「国・公共団体」を訴えるのであって、「公務員個人」**を直接訴えることはできません。

まとめ

この判例のポイントは、**「警察官の捜査は、たとえそれが地味な事実行為であっても『公権力の行使』である」**という点です。

「公権力の行使 = 警察・役所の仕事(ただし買い物などのプライベートな契約は除く)」と広くイメージを持っておくことが、得点に繋がります!