大判昭18年2月16日(建物買取請求権と土地の留置権)

大審院昭和18年2月18日判決は、借地権(当時の借地法)における**「建物買取請求権」**の行使が認められた後の、建物代金の支払いと土地の明け渡しの関係について判断を示した重要な判例です。

現代の借地借家法(13条)においても、この判例の考え方は基本的に維持されています。


1. 事案の概要

借地権の存続期間が満了した際、借地人(借りている人)が地主に対して建物を買い取るよう請求しました(建物買取請求権の行使)。

この権利が行使されると、地主の承諾がなくても、その瞬間に建物に関する売買契約が成立したのと同じ状態になります(形成権といいます)。ここで問題となったのは、以下の点です。

  • 争点: 地主が建物の代金を支払わない場合、借地人は「代金をもらうまで土地を返さない」と主張できるか?

2. 判決の要旨

大審院は、借地人の主張を認め、以下の判断を下しました。

同時履行の抗弁権の適用

建物買取請求権の行使によって成立した売買において、「建物の引渡し(土地の明け渡し)」と「建物代金の支払い」は同時履行の関係に立つとされました。

つまり、借地人は「お金を払ってくれるまで、建物も土地も渡しません」と拒絶できるということです。

留置権の成立

さらに、借地人は建物代金債権を担保するために、その建物に対して**留置権(りゅうちけん)**を行使できると認めました。建物が土地の上にある以上、建物を留置することは、結果として土地の明け渡しを拒む正当な理由になります。


3. この判例のポイントと実務への影響

この判決により、借地人は非常に強い保護を受けることになりました。

項目内容
建物の占有代金支払いがあるまで、借地人は建物を占有し続けても違法ではない。
土地の使用建物を留置している間、結果として土地も占有することになるが、これも適法とされる。
使用料の支払いただし、明け渡しを拒んでいる期間中も土地を利用している実態があるため、**地代相当額(不当利得)**は地主に支払う必要がある。

まとめ

大判昭18.2.18は、**「建物代金の支払いと建物の引渡し(土地明け渡し)は引き換えである」**というルールを明確にしたものです。地主が買い取りを拒否したり、代金を値切ったりして支払わない限り、借地人は堂々とその場所に留まることができるという、借地人保護の姿勢を鮮明にした判決といえます。