最判平成7年2月28日(外国人の地方選挙権)
外国人地方選挙権訴訟(最判平成7年2月28日)について、ポイントを絞ってわかりやすくご説明します。
この裁判は、前述の**外国人国政選挙権訴訟(最判平成5年2月26日)と結論は同じく「請求棄却(外国人の敗訴)」でしたが、地方選挙権について踏み込んだ「傍論(ぼうろん:判決の結論に直接必要ではないが、裁判官が示した意見)」**が非常に重要で、その後の議論に大きな影響を与えました。
1. どんな裁判だったの?
- 原告: 在日韓国人(特別永住者)
- 主張: 長年日本に住み、納税の義務も果たしているのに、地方公共団体(都道府県や市町村)の選挙で投票できないのは、憲法違反だ、と訴えました。
2. 最高裁判所の判断(結論と傍論)
最高裁は、この訴えを退け、**「外国人に地方選挙権を与えないことは憲法には違反しない」**という結論を出しました。
💡 ポイント1:憲法は外国人に地方選挙権を「保障していない」(結論)
- 国政選挙権と同じ理屈: 憲法15条1項の**「国民固有の権利」**という考え方から、公務員を選定する権利(参政権)は、国の主権者である日本国民に固有のものと解釈しました。
- 地方自治体の住民も「国民」に限定: 憲法93条2項(地方自治体の選挙権は「住民」にある)にいう「住民」も、日本国民を意味するのが相当であり、在留外国人に地方選挙権を憲法上直接保障したものではないと判断しました。
- 結論: 地方選挙権を日本国民に限定している現状の法律(公職選挙法など)は、憲法には違反しません。
💡 ポイント2:法律で付与することは「許容される」(傍論=重要な意見)
これがこの判決の最も重要な部分です。最高裁は、上記のように「憲法上の保障はない」としながらも、以下のような**傍論(意見)**を述べました。
「我が国に在留する外国人のうちでも、永住者等であって、その居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められる者について、法律をもって地方公共団体の選挙権を付与することは、憲法上禁止されているものではない。」
- 意味: 憲法が外国人に地方選挙権を与えろと命じているわけではないが、**国会が法律を作ることで、永住外国人などに地方選挙権を与えることは、憲法上問題ない(許容される)**ということです。
3. この判例が意味すること
この判例は、**「地方参政権許容説」**として、日本の法体系における外国人の地方参政権の議論の土台となりました。
- 法的地位の確立:
- 国政選挙権: 憲法上保障されず、法律で付与することもできない(→国の主権に関わるため)。
- 地方選挙権: 憲法上保障されないが、法律で付与することは憲法上許容される(→住民の日常生活に関わる事項であるため)。
現在もこの傍論に基づき、永住外国人への地方選挙権付与について国会で議論が続けられていますが、実現には至っていません。
