【国賠法1条】国会議員の質疑・立法と違法性(最判平9.9.9)
国会議員が国会で行う発言や、法律を作る「立法」という行為。これらが原因で誰かが損害を受けた場合、国は責任を負うのでしょうか?
結論から言うと、**「よっぽどのことがない限り、違法にはならない」**というのが判例の立場です。
1. 事件の概要(事案)
ある衆議院の委員会において、国会議員が特定の病院経営者について質疑を行いました。その際、議員は「その経営者が過去に不正行為に関わった」といった内容の発言をし、氏名を挙げて厳しく批判しました。
名指しされた経営者は、「事実に反する発言で名誉を傷つけられた」として、国家賠償を求めて提訴しました。
2. 判決の要旨(結論)
最高裁は、**「本件の発言は、国家賠償法上の違法とはいえない」**と判断し、国の責任を否定しました。
判断のポイント:職務上の義務違反があるか
裁判所は、国会議員の質疑が違法になる基準を以下のように示しました。
- 政治的責任が優先: 国会議員の活動(立法や質疑)は、国民に対して政治的な責任を負うものであり、個別の国民に対して法的義務を負うものではないのが原則。
- 免責の範囲: 質疑の内容が個人の名誉を傷つけるものであっても、直ちに違法にはならない。
- 違法となる例外的なケース: 議員が、**「その付与された権限の趣旨に明らかに背いて、個別の国民を攻撃することを目的とするなど、権限を逸脱・濫用したことが明白な場合」**に限って、例外的に違法となる。
3. 立法行為(法律を作ること)についても同様
この判例の流れは、議員の発言だけでなく「法律を作ること(立法行為)」にも適用されます。
- 原則: 法律の内容が憲法に違反していたとしても、それだけで直ちに国家賠償法上「違法」にはなりません。
- 例外: 国会が、憲法に違反していることが明白であるにもかかわらず、あえてその法律を制定したり、必要な改正を放置したりしたような**「特別な事情」**がある場合に限り、違法となります(在宅投票制度廃止事件など)。
4. 試験対策!キーワードチェック
試験で問われるのは、違法と判断されるための「ハードルの高さ」です。
| 項目 | 結論・キーワード |
| 違法性の判断 | **「明白に」権限を逸脱・濫用したといえるか。 |
| 原則 | 国家賠償法上の違法性は否定**される。 |
| 対象 | 国会での質疑、討論、および立法行為全般。 |
ポイント:
「名誉毀損にあたる発言があったなら、直ちに違法となる」という選択肢は**×(バツ)**です。「明白な逸脱・濫用」という強い言葉があるかどうかを必ず確認してください。
5. 関連判例リンク(内部リンク用)
- 裁判官の裁判(最判昭57.3.12)→ 国会議員と同様、裁判官の判断も「滅多なことでは違法にならない」という類似の構造を持っています。
- 在宅投票制度(最判昭60.11.21)→ 立法行為について、例外的に違法性が認められた数少ない例。
まとめ
国会議員の発言については、**「国民の代表として自由に議論させるために、多少のことは国賠法では問わない(政治の場で解決すべき)」**という考え方がベースにあります。
「国会議員・裁判官 = 明白な逸脱がない限りセーフ(適法)」とセットで覚えておきましょう!
