最判昭62年11月10日(集合動産譲渡担保の対抗力)
昭和62年11月10日の最高裁判決は、前述の「昭和54年判決」で認められた集合動産譲渡担保の理論をさらに一歩進め、「種類・場所・量的範囲」によって特定された集合物が、中身が入れ替わり続ける(流動する)場合でも、一つの対抗要件(占有改定)でそのすべてをカバーできることを確定させた極めて重要な判例です。
1. 事案の概要
- **債務者(養鰻業者)が、債権者に対して、特定のいけす内にいる「鰻(ウナギ)一切」**を譲渡担保に入れ、占有改定による引き渡しを終えました。
- その後、いけすの中のウナギは、成長して出荷されたり、新たに稚魚が補充されたりして、担保設定時とは中身が完全に入れ替わりました。
- そこへ、別の債権者が「今いるウナギは、担保設定後に新しく入ってきたものだから、当時の占有改定の効果は及んでいないはずだ」と主張して、差し押さえを強行しました。
争点
「占有改定の時に存在しなかった(後から補充された)個体に対しても、当時の占有改定の効果が当然に及ぶのか?」
2. 判決の結論
最高裁は、**「新しく補充された個体についても、当然に譲渡担保の対抗力が及ぶ」**と判断しました。
判決のロジック
- 集合物としての同一性: 種類、場所、量的範囲によって特定された「集合物」は、中身が入れ替わっても、その「集合物」としての同一性は失われません。
- 自動的な取得: 構成部分(個々のウナギ)が新しく搬入された時点で、それらは自動的に集合物の一部となり、別途、個別に占有改定をやり直す必要はないとしました。
- 対抗力の維持: 最初に「この場所にあるこの種類のもの一切」として占有改定を行っていれば、将来にわたって入れ替わる中身すべてに対して、第三者への対抗力が維持されます。
3. この判例の意義
この判決によって、実務上以下のことが確定しました。
- メンテナンス不要の対抗力: 倉庫やいけすの中身が毎日変わっても、債権者はその都度新しい契約を結んだり、占有改定をやり直したりする必要がありません。
- ABL(動産担保融資)の完成: 「流動する在庫」を担保にするための法的リスクが完全になくなりました。
昭和54年判決との違い
- 昭54判決: 「集合物」という考え方はOKですよ。
- 昭62判決(本件): 「中身が入れ替わっても、一回の占有改定でずっと有効ですよ」という対抗力の継続性を認めました。
