最判昭53年5月26日(余目町国家賠償請求事件)
最判昭和53年5月26日(通称:余目町(あまるめまち)国家賠償請求事件)は、行政法の一般原則の中でも**「平等原則」と「裁量権の逸脱・濫用」**を深く掘り下げる際に欠かせない判例です。
行政が特定の個人や団体を「特別扱い」したり、逆に「不利益に扱ったり」することが、どこまで許されるのかが争われました。
1. 事案の概要(何が起きたのか)
- 補助金のカット: 山形県余目町(現在の庄内町)の町長が、町の保育所に子供を預けていた保護者らで作る「保護者会」に対し、それまで出していた補助金を突然打ち切りました。
- 背景にある政治的対立: なぜ打ち切ったのか。実は、その保護者会が町長の方針に反対する運動(保育料値上げ反対など)を行っていたため、町長が「町の方針に協力しない団体には補助金を出さない」と判断したのです。
- 提訴: 保護者会側は、「正当な理由なく、自分たちだけ補助金をカットするのは平等原則に違反し、裁量権の濫用である」として、国家賠償法に基づき損害賠償を求めました。
2. 判決のポイント(最高裁のロジック)
最高裁は、町長の行為は**「裁量権の範囲を逸脱・濫用したものであり、違法である」**と断じました。
① 行政の「裁量」と「平等原則」
行政には「誰に補助金を出すか」を決める広い裁量(自由な判断権)があります。しかし、その裁量は無制限ではなく、**平等原則(憲法14条)**に縛られます。
② 不当な目的の禁止(権利濫用の禁止)
補助金を出すか出さないかの判断は、「その団体の活動が町の福祉に役立つか」といった行政上の目的で決めるべきです。 今回の「町長への反対運動をしたから」という理由は、行政上の合理的な理由ではなく、「反対派への制裁・嫌がらせ」という不当な目的によるものだと認定されました。
③ 裁量権の逸脱・濫用
最高裁は、この町長の判断を「考慮すべきでない事項を考慮し、本来の目的を外れたもの」として、裁量権の行使として著しく妥当性を欠くと結論づけました。
3. この判例の重要性
この判決が実務や試験で重視される理由は、以下の2点に集約されます。
- 「お金(補助金)を出す・出さない」という非常に自由度が高いはずの行為であっても、平等原則や不当な目的の禁止という「行政法の一般原則」によって厳しくコントロールされることを示した。
- 行政庁の「動機(なぜその判断をしたか)」が不純であれば、たとえ形式的に権限内であっても違法になり得ることを明確にした。
4. 学習のポイント:他の原則とのつながり
今回の解説に出てきた5つの一般原則に当てはめると、この事件は以下のように整理できます。
- 平等原則: 反対派だけを差別的に扱った。
- 権利濫用禁止: 補助金の決定権を「制裁」の道具として悪用した。
- 説明責任: 合理的な説明がつかない(不当な動機による)判断をした。
まとめ
- 結論: 町長の補助金カットは、平等原則に反し、裁量権の濫用として違法。
- 教訓: 行政は「自分たちに味方するかどうか」で国民を色分けしてはならない。

