最判平4.11.16(森川キャサリーン事件:外国人には再入国の自由が保障されているか?)
最判平4.11.16森川キャサリーン事件は、外国人の再入国の自由に関する重要な判例です。この事件について解説いたします。
事件の概要:
森川キャサリーンは、アメリカ国籍を持つ外国人で、日本人の夫と子供がいる永住者でした。彼女は一時的に日本を出国する際、再入国許可を取得しませんでした。帰国時に入国審査で在留資格を失っていると判断され、上陸を拒否されました。これに対し、森川は、再入国の自由は憲法で保障されているとして訴訟を起こしました。
最高裁の判断:
- 外国人の再入国の自由
- 最高裁は、日本国憲法下において、外国人は、憲法上、再入国の自由を保障されていないと判断しました。
- 外国人の入国の自由は、国際慣習法上も保障されていないとしました。
- 在留資格の喪失
- 永住者を含む外国人が一時的に日本から出国する場合、再入国許可を得ないと在留資格を失うとする出入国管理及び難民認定法の規定は、合理的であると判断しました。
- 家族生活の保護
- 憲法13条(幸福追求権)や24条(家族生活の保護)は、外国人に対して再入国の自由を保障するものではないとしました。
- ただし、これらの規定の趣旨から、在留期間の更新や在留資格の変更の際には、既に形成された家族関係等の事情を考慮すべきであるとしました。
- 国際人権規約との関係
- 国際人権規約(自由権規約)は、一般的に外国人の入国の自由を保障するものではないと解釈しました。
判決の意義:
- この判決は、外国人の再入国の権利が憲法上保障されていないことを明確にしました。
- 同時に、在留資格の更新や変更の際には、家族関係等の事情を考慮すべきであるという指針を示しました。
- 外国人の入国管理に関する国家の広範な裁量権を認めつつ、その行使には一定の配慮が必要であることを示唆しました。
批判と課題:
- この判決に対しては、国際化が進む中で外国人の権利保護が不十分であるという批判があります。
- 永住者の地位の安定性や、国際人権法の観点からの再検討が必要であるという指摘もあります。
この判例は、外国人の在留管理や再入国に関する法制度の基本的な考え方を示すものとして、現在も重要な先例となっています。
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